2.




 無事に届け物を終えた後、少年はスノウを港へと案内した(途中にあった騎士団の館を紹介されたときには正直かなり心臓の痛い思いをしたのだが、そのことについてはこれ以上は触れないでおく)。
 ラズリルは交易で発展した商業都市であると同時に、風光明媚な観光地でもある。特にその港の美しさはガイエン本国でも広く知られていて、ラズリルに立ち寄った旅人は皆、必ず一度はここを訪れるのだと少年は語った。
 この港を、まさかこんな形でもう一度訪れることになるとは思わなかった。郷愁の念と共に苦い思い出がじわりと胸に沁み、スノウは俯きそうになるのを必死に堪える。
 沖合に幾隻かの船が停泊しているのが見える。おそらくは海上騎士団の船だろう。それを見詰める少年の瞳は穏やかではあったがどこか誇らしげに見えた。
「君は、船が好きなのかい?」
 スノウが訊ねると、少年は僅かに胸を張った。
「あれは、ラズリル騎士団の船なんです。だから好きです」
「…だから?」
「………スノウさまが、いつか乗る船だからです。ラズリルを守る騎士になって……」
 ―――言葉が胸に突き刺さるような気がした。
 少年の口調や表情は、この年頃の子供のものとは思えぬほど控えめだった。口数も少なく、必要な時以外は自分から言葉を口にすることも殆どなかった。そんな彼が初めて自分から語ったのだ。自分以外の人間の名前を。
「スノウ…っていうのは?」
「僕の…家族です。大事な人です」
 そう言った少年の瞳は輝いていた。控えめではあったが、それでもこの少年はこんな表情も出来るのかと驚かされるほどに。
 彼が自分のことを人に語るときは、こんな顔をしていたのだと、このときスノウは初めて知ったのだ。
「…立派な騎士に…なれるといいね。その人…」
「はい」
 大切な人を語る少年の顔には、あのぎこちなくも優しげな微笑みが浮かんでいた。その眩しさを直視することが出来ず、スノウは少年からそっと瞳を逸らした。




 表通りに戻ってくると、少年は雑貨屋に行く用のある旨をスノウに告げ、許しを求めるように小首を傾げた。領主に頼まれた買い物があるらしい。勿論、反対する理由はスノウにはなかった。
 目的の雑貨屋は通りの端、騎士団の館にほど近い場所にあった。古びた扉を押し開けて入ると、厳めしい顔つきの中年の店主が、カウンターの向こうから不躾な視線を二人に投げて寄越した。スノウは身の竦む思いがしたが、少年のほうは全く動じることなく、品物の陳列された棚へと向かう。
「あった!」
 少年が指し示したのは本だった。ガイエンでは有名な小説家の作品で、スノウも伯の書斎で目にしたことのある物だ。発行部数が少なく、ラズリルで唯一書物を扱っている店であるここにもほんの僅かな冊数しか入荷しない。棚に並んでいたその本は残り二冊だった。
 少年は手を伸ばして、棚から本を取り出そうとした。
「……」
 だが、それは少年の身長よりもかなり高い位置に置いてあった。一生懸命に爪先立ちし、精一杯に腕を伸ばすも、その指先は背表紙に掠りすらしない。顔を真っ赤にして孤軍奮闘する少年を見て、スノウは不思議に思った。他に人が誰もいないのならともかく、ここには自分もいれば店主もいる。それなのに何故この子は誰にも何も頼もうとしないのだろう。まるで人を頼るということなど知らないかのように。
 スノウは彼の背後から、目的の本をひょいと取り上げた。
「あ…」
「はい。これだろ?欲しかったのは」
 渡してやると、少年は申し訳なさそうな表情で、ありがとうございます、と言った。
「取れないんなら、誰かに頼めば良かったのに」
 スノウが言うと、少年は小さく頷いたあと、でも、と続けた。
「何でもひとりで出来るようにならないと、早く大人になれないから」
「…大人に?」
 聞き返すスノウに、少年はまたこくりと頷く。
「どうして、早く大人になりたいんだい?」
 スノウの言葉に、大きな碧い瞳を瞬かせ、少年は力強い口調で答えた。
「強くなりたいから。スノウさまを…大切な人を守る為に」
 ――真っ直ぐに見詰めてくるひたむきな瞳に、胸を抉られるような思いがした。こんな小さな頃から…少年は信じて、そして決意していたのだ。彼はそれを自分の前ではけして口にしなかったけれど。
 そう、彼は昔からこうだった。自分ひとりで全てを背負い込み、けして弱音を吐こうとしない。…今の立場になってから、スノウは彼のそんな強さが、いつか彼自身を追い詰めるのではないかと懸念していた。それ故、彼をそうさせたのは他ならぬ自分であったという事実が、スノウにとっては大きな衝撃だった。
 黙り込んでしまったスノウを見て、少年は不安そうな表情になった。自分の言葉がスノウの気分を害したのではないかと思ってしまったのかもしれない。胸のうちに重く澱む罪悪感を押し込めて、スノウは無理に笑顔を作った。精一杯の償いの気持ちを込めて、少年の栗色の髪をそっと撫でてやる。
「…そうだね。でも、偶には人に頼ったり、弱音を吐いたりしても良いと思うな」
 少年の碧い瞳が大きく見開かれる。
 このひたむきな少年の強い思いに、きっと自分ごときの言葉など何の意味も成さないだろう。どんなに過酷な道であろうと、挫けることなく己の意志を貫き通す彼の背中を知った今ならわかる。だが、それでもスノウは言わずにはいられなかった。それが喩えほんの一瞬のものでしかなくても、彼の救いとなるように願って。
「…君は、ひとりじゃない。それを忘れないで」
 真剣なスノウの眼差しに、少年は神妙な表情で頷き…そして、嬉しそうに微笑んだ。
 あのぎこちない笑みではなく…幼い頃から幾度も目にしてきた、素直で穏やかな微笑みだった。




 日没を告げる鐘の音が響き渡り、黄昏の名残が最後の光を街に投げかける。藍色に沈み始めた天空には、既に幾つかの星が瞬いていた。
 見上げてくる少年の表情が、幾分固くなっていることにスノウは気付いた。今までずっと、無理を言って彼をここまで付き合わせてきたが、流石にもう限界だろう。これ以上遅くなれば、彼が屋敷で受ける叱責は更に厳しくなるに違いないのだ。
 結局、元の世界に戻る方法は得られなかった。彼が鍵を握っているように思えたのも、やはり気のせいだったのかもしれない。スノウは落胆したが、それを顔には出さないように努めた。駄目ならまた別の方法を考えればよい。
「もうここまででいいよ。遅くまで付き合わせて悪かったね」
 スノウはそう言って、繋いでいた手を離した。
「いいんですか?」
「うん。案内してくれて助かったよ。ありがとう」
 にこりと笑ってスノウは再び、少年に向かって手を差し出した。今度は別れの握手の為に。小さな手で遠慮がちにそれに応えると、少年はスノウに向かってぺこりと頭を下げた。
「こちらこそ、ありがとうございました」
 律儀に礼を述べ、それじゃ、と身を翻して駆け出したその時、横から勢いよく飛び出してきた何かが少年にぶつかった。
「……っ!?」
 見れば、それは昼間スノウが追い払った子供のうちのひとりだった。不意を衝かれた少年は当て身をまともにくらってバランスを崩す。咄嗟に踏ん張って転倒は免れたが、僅かに緩んだ腕の隙間から、子供はさっと本を奪い取った。
「あっ!!」
 少年は驚き、腕を伸ばして取り返そうとしたが、本を奪った子供が飛び退くほうが一瞬早かった。少年は追い縋ろうとしたが、邪魔をするように路地裏から数人の子供たちが飛び出してきて、その行く手を遮る。少年の追っ手を振り切った子供は、通りに面した海沿いの柵へと駆け寄ると、手にした本を躊躇うことなく海に向かって投げ込んだ。
「……!」
 少年の唇から声にならない叫びが漏れる。弧の軌跡を描いて宙を舞った本が、そのまま海へと墜落する様を、スノウは夢の中にでもいるような思いで眺めた。
 いじめっ子たちが歓声をあげる。
「な…なんてことをするんだ!?」
 我に返ったスノウが張り上げた大声に、子供たちは一斉に逃げ出した。だが一目散には去らず、走りながらも幾度も後ろを振り向いては馬鹿にしたように囃し立てる。
「スノウの腰巾着ー!」
「親なし子のくせにいい気になりやがって!」
「お坊ちゃまがいなきゃ何にも出来ないくせに!」
 口々に勝手なことを罵りながら、子供たちは宵闇の向こう側へと消えていった。
 大切な本を一瞬で失った少年は、暫く呆然としたように逃げる子供たちの背中を見詰めていたが、やがてその姿が見えなくなると、悲しそうに唇を噛み締めた。そんな少年を目にして、スノウの中に怒りが沸々とこみ上げてくる。
「一体何なんだ、あの子たちは!?」
「……」
「あんなことを言われて、君はどうして黙っていられるんだ!?」
「………いいんです。いつものことだし…それに本当のことだから」
 そう言って、少年は少し寂しそうに碧い瞳を伏せた。
「本当のことって…」
「僕は弱いから…。まだひとりじゃ何も出来ない役立たずだから…。それなのに、お屋敷に住まわせてもらって、スノウさまに遊んでもらって――だから、そう言われても仕方ないんです」
 自らの境遇を嘆くでもなく、淡々と語る少年の顔を見ていられず、スノウは弱々しく俯いた。
 スノウは知らなかった。彼が街の子供たちからこんな風にいじめを受けていたなどとは。それも、彼の性格や行為を理由とするものではなく、孤児でありながら領主の庇護下にあるというただそれだけのことで。煌びやかに飾り立てられたフィンガーフート家の権威と共に在ることが、その外側に居るものの目にはどれほどに羨ましく映るのかを、スノウは今まで、まったく知らずにいたのだった。
 少年の声には怒りや諦めの響きは含まれておらず、寧ろ、先程の子供たちを気遣うような感じすらした。当時の彼の境遇を思い返してみるに、それはけして恵まれていたものだとは言えないだろう。…それなのに、彼の心を占めているのは、いつだって彼自身ではなく他の者のことばかりなのだ。
 あの頃は気付きもしなかったけど…そんな君に、僕はいつだって助けられていたんだ…。
 もっと早くに気付けていたら、憎んだりはしなかったのだろうか?…傷つけあうこともなかったのだろうか?
 押し寄せる後悔に胸が押しつぶされそうになるが、スノウはそれをぐっと堪えた。大切なのは過去に拘ることでなく、今この時を前を向いて生きることだと、己に何度も言い聞かせてきた言葉を、今一度胸中に繰り返す。
「僕…もう、帰ります」
 少年がポツリと呟いた言葉に、スノウは目を瞠った。
「え…でも、本はどうするの?」
「伯爵さまにはちゃんと謝ります。僕が悪いんですから、お叱りは受けます」
「そんな、駄目だよ!」
 スノウは思わず声を荒げた。考えてみれば、彼をこんなに長い時間拘束してしまったスノウにも責任はあるのだ。叱られるとわかっている少年を、このまま返す訳にはいかなかった。
「いいんです。これ以上迷惑かけられません。僕のことは気にしないで」
 少年は気丈に言い募る。その悲しげな笑顔の前に、スノウはゆっくりと腰を下ろすと、碧い瞳を正面から覗き込んだ。
「カルマ」
 呼びかけに少年は一瞬きょとんとし、次にはっと息を呑んだ。
「僕の…名前…?」
 まだ言ってなかったのに…と呟く少年に、スノウはそっと微笑みかける。
「諦めないで。きっと方法はある。君ひとりが黙って犠牲になるなんて、そんなこと絶対にあってはならないんだ」




 あの本はまだ雑貨屋に一冊残っていたはず――既に日は暮れていたが、店はまだ辛うじて開いている時刻だった。二人はすぐに雑貨屋へと引き返し、最後の本がまだ棚に残っているのを見つけた。
 カルマは瞳に安堵の色を浮かべたが、すぐに困ったような表情になった。
「お金が足りません…」
 印刷技術がハルモニアや赤月ほどには発達していないガイエンにおいて、本は非常に高価な代物だった。ましてや、この本は元々の数が少ないとあって、店にあった他の本のゆうに三倍近い値がついていた。
「諦めるんだな。おまえさんたちに何冊も買えるモンじゃねえ。わかったらとっとと帰んな」
 店主が煩わしそうに振った手に、カルマは力なく肩を落とす。だが、スノウは諦めずに食い下がった。
「お金はありませんが――これでは代わりになりませんか?」
 スノウがそう言ってズボンのポケットから取り出した物を目にした途端、店主の顔付きが一変した。
 青鋼石(サファイア)をあしらった白金の指輪だった。台座に細かい装飾が施されており、鑑定の心得のある者なら一目で相当な値打ち物だとわかるだろう。それはスノウの母の形見であり、あの絶望的な流浪のさなかにも、奇跡的に失わずにすんだ物だった。今のスノウにとって唯一の財産とも呼べる品であったが、自分に誠意を向け続けてくれた碧い瞳の少年に報いる為ならば、手放すことを惜しいとは思わなかった。
「コイツは驚いた。本物の青鋼石じゃねえか。これとだったら本なんて言わずに、もっと高価な物とだって変えてやるぜ」
「いえ、この本が頂ければ充分です。失礼します」
 指輪を手にしてにやつく店主に頭を下げ、二人は足早に店を退出する。扉を出たところで、スノウはカルマに、そっと本を手渡した。
「そんな…駄目です……。大切な物だったんでしょう?あの指輪」
 泣きそうな顔で見上げてくるカルマに、スノウは静かに首を振る。
「受け取って欲しいんだ。これは僕からの感謝の気持ちだから」
「でも、案内しただけなのに、こんな高い物…」
 項垂れる少年の両肩に、スノウは優しく手を置いた。
「今の君にはわからないかもしれないけど、これは僕にとって必要なことなんだ。だから…ね」
 カルマは躊躇うように暫く下を向いていたが、やがて顔を上げると、スノウの瞳を真っ直ぐに見詰めた。
「僕、絶対に忘れません。いつかきっとお返しするから…だから、お兄さんのお名前を教えて下さい」
 …その刹那、強烈な眩暈を感じてスノウはよろめいた。意識が急に何かに引かれるように、暗闇の中へと堕ちていこうとする。驚いて助けを呼ぼうとする少年の声が、酷く遠い。だが、完全に闇に呑まれる前に、これだけは伝えなくてはならない。
「僕は…僕の名前は――――」






「―――スノウ!!」
 急速に引き戻された意識に、淡く輝くランプの光が沁みる。薄く開いた視界の先には、揺れる二つの碧い海があった。蒼白な面持ちでこちらを覗き込む瞳に、カルマ、と喉の奥で呼びかける。
 そこにいたのは記憶の中の小さな少年ではなく、自分と共に歩み続けてきた、たったひとりの幼馴染の姿だった。スノウの意識が戻ったのを認めて、張り詰めていたその表情が安堵の笑みに歪む。
「良かった…気が付いて。部屋に戻ってきて、倒れている君を見つけた時は、本当に心臓が止まるかと思った…」
 寝かされていたのはカルマの部屋の寝台だった。帰ってきたのか、とスノウは胸の内で呟く。あれは…先ほどまでの出来事は、全て夢だったのだろうか?朦朧としたままの頭でぼんやりと考えて、スノウははっとし、ズボンのポケットを探った。
 指輪がなくなっている。母の形見の青鋼石が。
 ではやはり、あれは夢ではなかったのだろうか…。
 困惑した表情で、身体を起こそうとしたスノウを、カルマが慌てて止めた。
「まだ起き上がらないほうがいい。吐き気とかない?…そう、良かった。ユウ先生は、軽い脳震盪を起こしてるだけだから大丈夫だろうけど、念の為に今日いっぱいは安静にしていたほうがいいって言ってたから」
「そ、そうなの…?」
 スノウの両肩を押さえて寝台に寝かしつけてから、カルマは傍らの卓を振り返る。そこには本棚の上に置かれていた宝石箱があった。
「これが頭に当たったみたいだね。本棚みたいな高い場所にこんな物を置いておくなんて、不注意もいいところだった。本当にごめん。大した怪我じゃなかったから良かったものの…このまま意識が戻らなかったらどうしようかと思って、生きた心地がしなかったよ…」
 カルマがすまなそうに声を沈ませる。スノウは箱をじっと見詰めた。そう、元はといえばこれこそが全ての始まりだったのだ。この部屋に存在した違和感。遥かな時空の鍵、追憶の物語への扉を開いた、不思議な小箱。
「ねえカルマ。どうして君がこんな物を持っているんだい?」
 スノウが訊ねると、カルマは箱を開けてみせた。中を覗き込み――スノウは絶句する。
 そこに納まっていたのは煌く青鋼石。ランプの照り返しを受けて揺らめくそれは、ちょうどカルマの瞳のように鮮やかな碧い輝きを宿していた。白金の台座には細やかな装飾。遠い昔のラズリルで手放したはずのスノウの指輪に間違いなかった。
 驚きのあまり固まったままのスノウの前で、カルマは少し照れたように話し始める。
「まだ子供の頃――僕は、お使いで頼まれた本を不注意で駄目にしてしまったことがあって。その時、ある人に助けられたんだ。その人、自分の大切にしていた指輪を売ってまで、代わりの本を手に入れてくれて――。だから僕は決めたんだ。いつか必ずこの指輪をあの人に返そうって。お金を貯めて自分で指輪を買って…名前も知らない人だけど、喩え何年掛かっても必ず探し出して…あの時の恩に報いようって。雑貨屋の店長さんには無理だって笑われたけど…それでも、その指輪は僕が買い取るまで誰にも売らないで欲しいって頼んだら、快く了承してくれてね。…かなり時間は掛かっちゃったけど、先日ようやく買うことが出来たんだ。でも僕、こんな高価な物、今まで持ったことがなかったから、どう保管したらいいのか全然わからなくて…取り敢えずそれらしい箱を買って入れておくことにしたんだけど―――って…ちょっとスノウ、どうしたの?」
 話の途中で、突如弾けるように笑い出したスノウにカルマは面食らい、海色の瞳を何度も瞬かせた。寝台の上に仰向けに横たわったまま、スノウは尚も笑い続ける。笑うような話ではないとわかってはいるものの、しかし一度訪れた発作はどうにも治まってくれそうになかった。
「一体何なの?僕何か可笑しなことを言った?」
「ご、ごめん。そういう訳じゃないんだけど…でも止まらなくて…あはははは」
 笑いのあまり目尻から涙を零しながらも、心は晴れ晴れと冴え渡っていくのを感じる。
 大丈夫だ。
 どんなに遠く隔たったって、時を越えたって――、僕はもう、迷わない。間違えたりしない。
 遠い過去から連綿と続く絆が、僕たちをきっと繋ぎとめてくれるから。
 僕の思いが、君に届いたように―――。
 君の思いが、僕に還ったように―――。
 笑い声は温かく部屋を満たしていく。唖然としていたカルマさえもが、とうとうその声に釣られて笑い出すまでに、然程時は掛からなかった。
 互いの存在を確かめるように寄り添って笑う二つの影が、柔らかなオレンジ色の光の中で、仄かに揺れた。















2006年の5月に発行された「スノウ&4主アンソロジー」(完売済み)に寄稿させて頂いた小説です。
何故か急に青年スノウとお子様4主を書きたくなったので、スノウに時の旅人になって貰いました(笑)
力不足ゆえ、色々居た堪れない部分はありますが、今までに書いた中で、一番書くのが楽しかった作品です。





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