願いと誓いと












 わぁ…んと嫌な音が耳につく。巨大な蜂にも似たモンスターは群れを成し、周囲を我が物顔で飛び回っている。動き回る標的に舌打ちをしつつ、それでも狙いを定めて放った矢は、化け物のうちの一匹を正確に射落とした。間髪入れず放たれた別の矢が、また別の敵を射抜く。そして更にもう一本。視界の悪い無人島の密林の中でも、三人の射手による連携は完璧だった。絡み合った木々の枝を盾にして矢の雨を逃れた虫たちには、双剣の一撃が容赦なく襲い掛かる。
 不意に背後に現れた殺気にはっとなる。しかし、振り向きざまに番えた矢を放つより先に、黒い刃の閃きが、突っ込んできた羽虫を一刀のもとに斬り捨てた。鮮やかとしか言いようのない身のこなしで、余裕の笑みすら浮かべてこちらを振り返ってみせるカリョウに、テッドは苦虫を噛み潰したような視線を送る。全く、可愛げのない。
「テッド君、次!来るよ!」
「わかってる!」
 戦闘の気配に引き寄せられたのか、毒々しい色のカズラークイーンが繁みを掻き分けるようにして、一行の前に迫っていた。いっぱいに開かれた口(?)めがけて、アルドが番えた矢を放つ。すかさずフレアの矢がそれに続いた。二本、三本と連続して打ち込まれる攻撃に耐えかねて、カズラーは何とも形容しがたい咆哮をあげると、緩慢な動作でゆるゆると後退した。全身からぶら下がったツタや触手が、激しくのたうって周囲の地面を鋭く抉り、撒き散らされた石礫が勢いよく降ってくる。反射的に頭を庇う姿勢をとったものの、しかしそれらは全て、テッドの身体に届く前にカリョウの振るった剣によって弾き飛ばされていた。
 舞う蝶の優雅さと、荒れ狂う稲妻の激しさと。
 剣を抜いたカリョウは、そのどちらをも手にしていた。
 しなやかな跳躍によって一気に間合いを詰めてきた相手を一思いに飲み込もうと、カズラーは再び大きく口を開く。だが、いかんせん緩慢すぎるその動作では、カリョウの動きを捉えることは不可能だった。翻った刃に十文字に切り裂かれ、人喰い植物の巨大な身体は、地響きを立ててその場に崩折れた。




 全く、腹の立つことこの上ない。
 虫たちの死骸に突き立った矢を引き抜き、まだ使えそうなものを矢筒に収めながら、テッドは尖った視線をカリョウに向けた。あれほどの動きを見せた直後だというのに、額に汗ひとつ浮かべておらず、呼吸も乱していない。いつ新たな敵が現れるともしれないこの状況を、寧ろ楽しんででもいるかのような表情で、アルドたちと一緒になって矢を拾い集めている。だが、邪気のない子供のようなその笑顔が、実は悪魔の微笑であることを知らないテッドではない。
「なんだって、こうも俺に付き纏う?いちいちこれ見よがしに庇いやがって」
 不機嫌も露わにそう言うと、カリョウはそう?とでも言いたげに小首を傾げた。だが、余裕綽々の笑みを浮かべた、その態度には一向に変化がなかった。わかっていてやっていることがバレバレだから、益々テッドは面白くない。
「駄目だよ、テッド君。助けて貰ったのにそんなこと言っちゃ」
 脇から天然ボケ男が更に追い討ちを駆ける。険悪な空気をさらっと流す為の発言というわけでなく、彼の場合は心底そう思って言っているのだから始末に負えない。宥めるように向けられてくる眼差しに、頼むからこれ以上話をややこしくしないでくれとの訴えを気配のみで返して、テッドは殊更に眦を吊り上げた。
「助けてくれと頼んだ覚えはない。俺に構うなと、いつも言っているだろう」
「でも、構うなと言われると、逆に構いたくなるのが人情ってものよ」
 背後から王女のおっとりした声が掛かり、テッドは頭を抱え込みたくなった。こいつら実は結託してるんじゃなかろうかと、口の中だけで呟く。どうにもこうにも、足並みを乱したがる人間がこの軍には多すぎる。それともここでは自分のほうが異質なのだろうか。
「迷惑だって言ってるんだ。自分の身くらい自分で守れる。余計な手出しをされると却って邪魔なんだ。俺に背後から矢で撃たれたいのなら話は別だが」
「やだな〜。優しい優しいテッド君にそんなこと出来るわけないでしょ♪」
 コイツいっぺん本気で撃ったろかとテッドは思う。
 そよ吹く風に揺れる栗色の髪を、勿体ぶった仕草で掻きあげながら、カリョウは艶やかに微笑んだ。
「なんかね。頑張ってます!…って感じの戦いぶりを見せられると、ついつい放っとけなくなっちゃうんだよね。過保護はいけないって、わかっちゃいるんだけど」
「おまえに保護される謂れはない」
「悔しかったら、もっと強くなるんだね。庇う必要なんて、全くなくなるくらいにさ」
 ―――今だって必要ない、とテッドは嘆息した。最初の羽虫の一撃も、次の石礫の時も、何も庇ってくる必要などなかったのだ。攻撃の威力もタイミングもテッドには図れていたし、自分ひとりで問題なく対処出来るレベルのものだった。カリョウも、何も本気で危ないと判断して庇ったわけではないのだろう。ただ、自分の反応を見て面白がっているだけだ。その証拠に他の仲間に対しては、アルドは勿論のこと女性であるフレアですら庇おうとはしていない。
 この疫病神め。テッドは歯噛みした。
 誰も傷つけたくないと、もう二度と右手の死神に好き勝手させてなるものかと、その為に再び孤独を受け入れる覚悟をした俺の心を、何故にこうも乱そうとするのか。
「おまえの助けが必要なほど弱くはない…今だってな」
 ぶっきらぼうにそう言い捨てると、テッドは軍主にくるりと背を向け、さっさと先頭に立って歩き始める。
 借りは返す――それまではここにいてやっても良い――自分で口にしたはずの言霊の魔力が、今となっては心底恨めしかった。




 勢いよく吐き出されたブレスを、横っ飛びに飛んでかわす。着地と同時に放った矢は獲物の目を正確に狙ったが、届く前に振り上げられた鋏に叩き落される。テッドは軽く舌打ちした。
 午睡を予期せぬ来訪者達に邪魔された古代ガニは、心底おかんむりだった。怒りそのものと思えるような炎を吐き散らして、盛んにこちらを牽制してくる。固まっていては危険だと判断し、一行はカニの身体を取り囲むように四散した。ブレスを巧みに掻い潜ったカリョウがまず接近し、足の付け根に深く刃を突き立てる。巨大ガニは絶叫し、カリョウを振り落とそうと残った足をばたつかせた。
「カリョウさん、危ない!!」
 アルドとフレアが後方から一斉に仕掛ける。カンカン、と小気味良い音と共に、射掛けられた矢の大半は固い甲羅に弾かれたが、何本かがその隙間に突き刺さった。
「ちょっと!あんまり甲羅に傷つけないでよ!使い物にならなくなるから」
 尚も暴れるカニから飛び退って、カリョウが無茶なことをいう。尤も、ここには最初からこの甲羅目当てで来たのだから仕方ないと言えば仕方ない。アルドたちもわかっているので、すみません、と苦笑ひとつ返しただけで特に気にした風もない。
 じりじりとカニとの間合いを詰めながらテッドは考えた。手っ取り早く片をつけるには紋章を使ったほうが効率が良いのはわかっているが、強力な魔法による攻撃は甲羅そのものを破損させてしまう可能性が高い。ならば遠巻きに攻撃を仕掛けて相手の体力が尽きるのを待つより、懐に潜り込んで、矢で直接急所を狙ったほうが良い。危険は伴うが、いつまでもこんな島で軍主の気紛れに振り回され続けているのは御免だった。
 カニの注意がカリョウたちに向いているのをいいことに、テッドは素早く行動を開始する。
「アルド!フレア!援護!」
 テッドの動きに気付いたカリョウが指示を飛ばす。余計なことを、とテッドはこっそり歯軋りしたが、ばらばらと降ってくる矢にカニの意識が向いているのはありがたい。巨大な足の合間から縫うように懐に滑り込み、テッドはカニの口中めがけて矢を放った。
「―――――!!」
 カニはもんどりうって再び奇妙な咆哮を上げ、鋏を目茶苦茶に振り回した。飛び退ろうとしたテッドだったが、予期せぬ方向から飛んできた一撃をかわし損ねて派手に転倒した。はっと顔を上げれば、怒りに滾るカニの目が眼前に迫っていて、思わず身震いする。
「テッド、逃げて!」
 フレアが何とか注意を逸らそうと矢を射掛けるが、完全に逆上した相手には全く効果がなかった。カニが再び大きく鋏を振り上げるのが見える。体勢を立て直して逃げる余裕はなかった。こうなったら仕方ない、多少甲羅に傷をつけることにはなるだろうが、魔法で粉砕するしか――そう思って烈火の紋章を宿した左手に意識を集中しかけたその時に、何か動くものが視界の端を掠めた。
「………!?」
 一体いつの間に紛れ込んできたのか、カニのすぐ後ろに一匹の小さなリスがいる。巨大な足の隙間から辛うじて見えるその存在に気が付いて、テッドは息を呑んだ。
 バカ、近すぎる―――!
 今魔法を打てば、小さな命は確実に巻き添えになる。そう思った瞬間、左手に集った魔力が霧散した。
 南無三!
 衝撃の予想に身体が固くなる。観念してぎゅっと目を閉じた瞬間、響き渡った鈍い衝撃音に反射的に顔を上げた。
 宙に舞い散った、鮮やかな紅の軌跡。栗色の髪と赤いバンダナを翻らせ、緩やかな弧を描くようにして崩折れる黒衣の背中。余りに生々しい悪夢に、瞳を逸らすことも出来ず、その一部始終を見届けて―――テッドの喉から、絞り出すような悲鳴が迸った。
「―――カリョウ!!」





 ―――あれから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
 アルドに支えられ、医務室へと運ばれていったカリョウの血の気を失った表情が、瞼の裏に鮮明に焼きついて離れない。
 巨大ガニが渾身の力を込めて叩きつけた一撃は、カリョウの上着はおろか、その下につけた胸当てすらもやすやすと引き裂いた。倒れた身体を思わず抱きとめたときに流れ出た血の感触が、今もこの手に残っている。まるで、命そのものが彼の身体から流れ出ているかのような、そんな錯覚すら起こさせるほどに、それは生々しすぎる記憶で。
 蘇ってくる悪夢を脳裏から追い出すかのように、テッドは大きくかぶりを振った。
 大丈夫だ――助かるって医者も言ってた…何よりアイツが――殺したって死にそうにないあの疫病神が、こんなことくらいでくたばるはずはない。
 部屋に篭っていれば、心配した船員たちが次から次へと訪ねてくるのに堪りかねて、テッドは部屋を抜け出し、外の空気を吸おうと甲板へと足を運んだ。
 陽はとうに落ちており、漆黒の空には無数の星が瞬いている。宝石箱をぶちまけたような、という表現は誰の言葉だったか、生憎テッドには覚えがなかった。喩え覚えていたとしても、今のテッドには星空を見上げて感傷に浸る余裕はなかったのだが。
(俺が……あのとき躊躇ったから―――)
 後悔が、深く深く、自身の胸を抉る。
 いつも自信に満ちた笑みを浮かべて、まるで稲妻のように、自分の前を駆けてゆくカリョウ。時折振り返っては見せる、余裕綽々の態度と表情とが気に入らなかったから、いつの間にかその存在がごく当たり前のように――本当に、呼吸をするのと同じくらいの自然さで、傍らに在ることに気付いていなかった。
 今、自分の隣に彼の姿はない。
 失うかもしれないというときになって、初めて思い知らされた。
(俺が…アイツに自分を捨てさせた――)
 選ばなくてはならないのは、本当は彼ではなく自分のほうだった。戦っているのは自分ひとりではない。守る為、生き延びる為に、時には切り捨てなければならないものもあるのだということは、痛いほどわかっていたはずだったのに。仲間を、彼を思うなら、自分はあのとき躊躇うべきではなかった。喩え罪なき小さな命を犠牲にしてでも、己の役割を全うせねばならなかったのだ。
(こんな思いをする為に、俺は霧の船を出たんじゃない!)
 二度と過ちは繰り返さないと、自分はあのとき誓ったはずだった。その結果がこうだ。甘さを捨てられない自分の弱さに、つくづく嫌気がさす。
(今度、同じようなことが起きたら――)
 目を擦っても消えない鮮血の幻に、再び思考が闇の中へと沈みかけたそのとき。背後から穏やかな声が掛かった。
「………こんなところにいた」
 聞き慣れた、それでも今はこの場にいないはずの声に驚いて振り返ると、はにかむような笑みを浮かべたカリョウの姿があった。バンダナはつけておらず、ゆったりとした作りの麻の部屋着を纏った彼は、いつもよりずっと幼く、華奢に見える。
「何処に行ったのかと思って探し回っちゃったよ。全く、怪我人に余計な労働させないでよね」
 冗談めかした口調はいつもの彼のものだったが、発せられる声には力が篭っていない。それが昼間受けた傷の所為なのだと考えれば、それだけでどうしようもない遣る瀬無さが胸に込み上げた。無事な姿を目にした安堵と、彼を傷つけた自分への怒りに居た堪れなくなって、思わず縋り付こうと伸ばしかけた手は、しかし、カリョウへと届く前に力なくその場に落ちた。
 手を伸ばしてどうなる。けして届かない――届いてはいけないとわかっているのに……。
 コイツが守るべきは、俺ではないのだと知っているのに…。
「すまな……かった……」
 静かに見詰めてくる蒼い眼差しから、逃げるように顔を背けて、テッドは呻くように呟いた。
「俺が…さっさと魔法を撃っていれば、こんなことにはならなかったのに…助けはいらないなんて言っておきながら、結局は俺の所為で、おまえにこんな…」
「テッド」
 苦渋に満ちた懺悔を穏やかに遮って、カリョウはつかつかとテッドの傍らに歩み寄った。尚も俯いたままのテッドの肩に、甘えるように凭れ掛かってくる。
「肩貸してくれる?立ったまんまは、まだちょっと辛い」
「…ちょっ……!…バカやろ、辛いならなんで大人しく寝てないんだ!?」
 困惑しながらも、しな垂れかかってくる身体を支えようと手を伸ばしかけたテッドの耳元で、カリョウは小さく囁いた。
「……リスは、無事だったよ」
 驚いて顔を上げれば、至近距離に迫った蒼い瞳がにこりと笑んだ。
「ちゃんと逃げられたみたいだよ。医務室で手当てを受けてるときに、アルドが教えてくれた。テッドが、リスを巻き込むことを恐れて、魔法を撃てなかったことも」
 カリョウは、そこで一旦言葉を切り、軽く肩を竦めた。
「アルドに言われた。テッドには僕から教えてやってくれって」
 人の良さそうな黒髪の青年とカリョウの遣り取りが目に浮かぶようで、あのお節介め、とテッドは思わず唇を噛んだ。
「俺の…俺の判断ミスだ…」
 一度言葉にしてしまえば、堰を切ったように、後悔が次々と溢れ出した。
「俺がやらなくてはいけなかったのだということくらい、わかっていたはずだったのに…。次は…次があるなら…もう二度と迷ったりはしない!目先のことに捕らわれて、自分に掛けられた責任を見誤ったりしない…だから……」
 こつん、と合わさった額に、テッドは言葉を途切れさせた。栗色の直ぐな髪が、さわり、と頬を撫でる。閉じられた瞼の先で微かに震える長い睫に、呼吸をすることすら忘れてしまいそうで。身じろぎすら出来ず、触れた箇所からほんのりと沁みこんで来る温もりに、思わず零れそうになる涙を、テッドは必死になって堪えた。
「テッドは…今のままでいいよ」
 ややあって零れた彼の声は、これが本当にあの小悪魔なのだろうかと思えるほどに素直で、優しい響きを帯びていた。
「僕は…リスの存在に気が付かなかった。でも、君やアルドは気付いていた。それでいい。そうでいて欲しいと…そう、思うよ」
 静かに、額が離れれば、間近に覗き込んでくる大きな瞳と目が合った。淡い色彩のそれは、他の人間が例えるような海の色ではなく、天に閃く稲妻の光だと、テッドは思っている。だが、猛々しい雷鳴も今はその気配を潜め、空恐ろしいほどの静けさを湛えて、深く昏く凪いでいた。
「テッドには今のままでいて欲しい…守るもの、生き残らせるべきものの為に、取捨選択の罪を犯すのは僕の仕事だ」そこまで言ってカリョウは、少し寂しそうに笑むと、テッドの肩先に額を押し付けるようにして顔を伏せた。
「……だから、どうかこれからも、僕に守らせて欲しい……」
 甘えるような口調と態度とは裏腹に、呟かれた言葉には固い意志と、そして微かではあるが明らかな拒絶が込められていた。共に背負おうとするのではなく、何処までもひとりで駆け抜けていこうとする孤高。こんなに近くにいるようで実は誰よりも遠い、絶対の距離感を見せ付けられたような思いがして、寂寥感にも似た感情が、テッドの胸を重く満たした。
「何度も言わせるな…俺なんか庇う必要はない」
 拒絶の言葉を発しているのは自分のほうなのに。こうして触れてくる彼の存在は、しかしその全てが曖昧で、何処か現実味がないような気がする。
 また失うのではないかとの不安を、振り切ることが出来ない。
「それは…無理な相談かもね。庇うな、って言われても、危ないと思ったら身体が勝手に前に出ちゃうんだよ」
「……そんなことを言われたら…俺は船を降りるしかなくなる…」
「駄目だよ。借りを返すと言ったのは君自身だもの。契約違反は認めないよ」
「なら……おまえは俺が守る」
 テッドの言葉に、カリョウは弾かれたように顔を上げた。
「俺に今のままでいて欲しいと言うのなら、俺は俺の決めたようにする。おまえがおまえの決めたものを守るように、俺はおまえを守る――これから先、おまえが誰を捨て、何を選んでも、俺だけはおまえを守ってやる」
 迷いを振り切るように支えた腕に力を込めれば、カリョウが、一瞬驚いたようにその身体を震わせるのがわかった。逡巡の後に、肩に回された手にそっと委ねるように応えるように力が篭って……無防備に、呆然と見開かれていた瞳を、不意に勝気な炎が彩った。
「…言ったね」
 にっ、と不敵に笑った唇に、反射的にしまった、と思ったもののもう遅い。
「なら、今度から何をするにも、何処へ行くのにも付き合って貰うからね♪」
 先程までの殊勝な態度は全て奸計だったのかと、疑いたくなるほど生き生きとした表情は、もうすっかりいつものカリョウのそれで。してやられたと気付くと同時に、深い虚脱感に襲われテッドは溜息を吐いた。やっぱり俺はコイツに振り回される運命から逃れられないのかと、諦念と共にガックリ肩を落とす。
 けれど、それでも。
 胸のうちに、何となく残った温かい感情を、心地よい、と感じてしまう。それを否定する気にもなれない自分に戸惑いながらも、離れない温もりが今は嬉しかった。
 友達になりたい――そう告げた彼の言葉に、応えてやれない自分であることはわかっているけれど。
 それでも、今だけは。
 少しだけ、が許されるものであるならば。




(一生の、お願いだから――――)




 最後の地に、勝利を告げる東南の風が吹くまでは。
 未来という名のその船に、この身を委ねてみるのも悪くない。














これは主テド…?それともテド主…?ううむ(汗)
こうして、テッドは益々カリョウに逆らえなくなっていくのです。
頑張れテッド、それが君の幸せだ!!(酷)
ありきたりな、捻りも何もない微妙な話で申し訳ありませんが、精一杯の愛を込めて。
謹んで秋嶋優津さんへ。お誕生日おめでとうございます。




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