夜想曲















それはまるで、さざめく水面に捕われた月のように。



夜気をはらんだ潮風が火照った頬に心地よい。周囲に人がいないのを確かめてから、船縁にだらしなく身体を預けるように凭れ掛かり、カルマはほうと息を吐いた。
 後部甲板はウゲツやシラミネたち漁師仲間の縄張りだが、今日は既にそれぞれの獲物を抱えて船内に引き上げたようである。ネコボルトたちが騒いでいたようだったから、きっと成果は上々だったのだろう。網いっぱいの魚を前にしてはしゃぐ彼らの姿が目に浮かぶようで、カルマは唇の端に微かに笑みを浮かべた。
 残照の最後のひとかけらを攫った風が、射干玉の闇に融けて消える。波間をたゆたう茜色が全て闇に沈むと、途端に寒くなった。夜の冷気が身体に纏わり付いて、侵食するかのようにじんわりと滲み込んでくる。だが、それでも身体の奥底は何かが燃えているかのように熱かった。じんじんと疼くこめかみを押さえて、カルマはまたひとつ息を吐く。見上げた空には、下弦の月が仄白く輝いていた。
 夕食時の施設街の喧騒もここまでは届かない。静かな波音だけが響くそこで、瞳を閉じて揺れる世界に身を委ねてみる。自分は母を知らないが、母親の胎内にいたときというのは、ちょうどこんな感じだったのだろうかとぼんやり思った。だが、今に限って言えば、揺れていると感じるのは足下の船の所為ばかりではないようで。気だるさを伴った浮遊感に身体全体が余すところなく包み込まれていた。
 朝目覚めた時には、たいしたことはないだろうと高を括っていた。念願であったオベルの奪還を果たした今、軍の士気はかつてないほどに高まっている。この大事な時期に軍主である自分が休むわけにはいかなかった。まして自分の持つ紋章の性質のことも考えると、不調を訴えるのは軍内にいらぬ心配の種を撒きかねない。元々丈夫なのが取り柄の自分、幾らか経てば自然に回復するだろうと思っていたのだが、実態はそうそう甘くはなかったようだ。思えばラズリルを追放されてから今まで、ずっと息つく間もなく全力で走り続けていたようなもの、疲労が溜まっていたとしてもおかしくはない。何でもない振りを装い務めをこなしてきたものの、流石にもう限界だった。
 ここに長く留まるのも良くはない。夜気は弱った身体を確実に蝕み、その領域を広げてゆく。だが、身の内で暴れる熱をはっきりと自覚してしまった身体は、もはや素直に言うことをきいてくれそうにはない。軍議の前に少し息抜きを―――などと考えて、ひとりでこんな場所に出て来てしまったのが仇となった。
(だから、駄目なんだ―――)
 立ち止まったら最後、二度と歩けなくなる。今の自分は正しく、そんな状態だった。
 倒れたくはなかった。やらねばならないことは、まだたくさんある。自分を信じて付いてきてくれた人々に応えたい気持ちもある。だが一方で、そんなにしてまで歩き続けることに何の意味があるのかと、冷めた眼差しを虚空に投げる自分も同じ場所に存在した。諦めという名の誘惑は何よりも甘く恐ろしい。夜の帳が下りるように、それは音もなく覆い被さってくる。
 熱と冷気の鬩ぎ合い。考えることを放棄してはならないと思いながらも、ゆらゆら、ゆらゆら、世界は揺れる。水面に映る月のように。原始の海に沈むように。底のない闇と静寂にこの身を委ねて。ゆらゆら、ゆらゆら。
「……バカやろう!なにやってるんだ!?」
 突如、頭上から浴びせかけられた怒号にはっと我に返る。いつの間にか座り込んでしまっていたらしい自分を、険しい目付きで睨め付けているのは、青い外套の少年。
 唇の内だけで、テッド、と呼ぶ。見られたくないところを見られてしまった気まずさに焦って立ち上がろうとしたものの、足にはまったく力は入らなかった。身体が自分のものではないかのように酷く重い。
 琥珀の視線が目の前まで下りてくる。栗色の前髪を掻き分けて額に手を当て、テッドは小さく舌打ちした。
「医者を呼んでくる。ここにいろ」
 そう言って身を翻そうとした彼の手首を、反射的に捕まえた。テッドは驚いて振りほどこうとしたが、無我夢中でその手を握り締める。彼をこのまま行かせてはならない。身動きひとつままならないはずの身体に、この時ばかりは信じられない力が篭った。
「離せっ…!」
「離さない」
「何でだ!?」
「医者に診せるほどのことじゃない」
「嘘吐くな。おまえ、どう見たって病人じゃないか。罰の紋章のことを忘れたのか?自分じゃどうってことないつもりでも、宿主が弱ればそいつは容赦なく暴れだす。不摂生は冗談抜きで命取りだぞ」
「だったら尚のこと、ここへ人を呼ぶわけにはいかない。もし僕が死ぬようなことになれば、その人が紋章の次の犠牲者になる。この船の船長として、乗組員をそんな危険な目に遭わせることは出来ない」
「…おまえ、自分が何言ってるのかわかってるのか?」
「わかってるよ。だから僕はここを動かない。人を呼ぶことも許さない」
 熱っぽく潤んだ瞳は、それでも抗いがたいほどの意志を秘めて、琥珀の眼差しを真っ向から射抜く。
「もし、テッドが手を振りほどいたら、僕は今すぐここから海に身を投げる」
 掴んだ手首に、掌から漏れた熱がじんわりと沁み込んでいく。食い込むかと思うほどに強く握り締めた指先に、テッドの鼓動が直に触れた。
 薄闇の中、交錯する視線が束の間時を止める。結局、根負けしたのはテッドのほうだった。呆れたように溜息ひとつ吐いて、カルマの隣にどっかり腰を下ろす。
「わかったから、この手を離せ」
 迷惑そうに呟きながらも、その表情は微かに優しげだった。




 カルマは薄目を開けて、隣に座るテッドの横顔を盗み見た。腕と足を組み、固く瞳を閉ざしたその顔から表情は読み取れない。だが、眠ってなどいないことは気配と呼吸の深さでわかる。
 眠れないのはカルマも同様だった。世界は相変わらず不安定に揺れ続けていたが、隣から聞こえる息遣いが、意識が闇へと墜ちていくのを妨げていた。

 カルマの肩にはテッドの青い外套が掛かっている。カルマは固辞したのだが、テッドに「着ないのなら大声上げてでも人をここに呼んでやる」と言われて不承不承受け取った。持ち主の体温の残るそれは、ふんわりと温かかった。当のテッドはというと袖のない黒い上着一枚きり。外套を借りる前のカルマよりも、余程寒そうな姿の彼を目にすれば、ますます眠りは遠のいていく。
 何とも奇妙な光景だろうと思う。夜の海、さして広くもない後部甲板でただ二人、眠るでもなく語るでもなく座り込んでいる。元はといえば自分が強情を張った所為だと勿論わかってはおり、隣に座る人物に申し訳ないことをしたという思いもある。僕は大丈夫だから君は先に戻っていいよ、そう言おうかとも思ったが、彼が承知するはずもないだろうことは考えなくてもわかる。口調も態度もそっけないが、彼が案外面倒見の良い性格だということは、この船に乗るものなら誰でも知っている。気付いていないのは本人だけだ。
「…おまえ、何でそんなに依怙地になるんだ?」
 唐突の問いに、思考の海を漂っていた意識を慌てて引き戻す。琥珀の瞳はやはり眠ってはおらず、薄っすらと開かれた瞼の下からカルマを見詰めていた。
「言ったよ。死ぬかもしれない時に誰も傍には寄せたくないからだって」
「…俺はいいのかよ…」
「テッドには罰の紋章は移らないんだろ?」
 そこまで言って、カルマはふと、何故テッドがここへ来たのかを疑問に思う。
「そういえば、君はどうしてこんな所に来たの?」
 訊ねると、テッドはあからさまに渋い顔になった。
「軍師サマ命令。おまえの姿が見えないから探して来いって」
「エレノアが?どうして君に?」
「守備範疇外の仕事はその道の専門家に任せる主義なんだとさ」
 人を迷子探しの専門家呼ばわりしやがって、と悪態をつくテッドの右手に視線を落とし、カルマは納得して小さく頷いた。紋章を宿してまだ日の浅い自分にはテッドの持つそれの気配はわからないが(力の発動時は別として)、彼のほうは罰の紋章の発する波動を感じることが出来るらしい。それと意識しなければわからないほどの、微かなものだと言ってはいたが。
「死ぬかもしれないとまで考えてるなら、何でこんなになる前に養生するなり誰かに言うなりしなかったんだ?」
 軌道修正された話題に、カルマは少しばかり眉根を寄せる。曖昧に笑ってはぐらかすには目の前の人物は少々相手が悪かった。下手な馴れ合いを必要としない分、彼の言葉は容赦がなく、誰よりも的確に痛い真実を抉り出す。
 「…みんなに余計な心配を掛けたくなかった。それだけだよ。クールークとの戦いもこれからが正念場って時に、軍主が寝込んでたんじゃ格好付かないでしょ?」
 口調はお道化てみせたが、正直に思ったままのことを述べてみる。と、テッドは意地の悪い笑みを唇に浮かべた。
「なんだ。怖いのか」
 カルマは思わず目を瞠った。先程の自分の言葉のどこから、テッドがそういう感想を捻り出したのかがわからない。何と答えたら良いのかも思いつかず、酸欠の魚のように口をぱくぱくさせる自分に一瞥くれて、テッドはふんと鼻を鳴らした。
「おまえ、軍主は強くて当たり前だと思ってるだろ?」
 また、訳のわからないことを言う。彼の意図はまったく読めなかったが、取り敢えず返事は素直に返した。
「それはそうだよ。僕たちがやっているのは遊びじゃない。戦争だ。勝ちたいと思う気持ちがあるなら、弱い軍主になんて誰もついてこない。僕が強くなれなかったら、この軍はバラバラになるしかない」
「そうなったら、あのオッサンが軍主をやればいいだけの話じゃないのか?戦えるのは何もおまえだけじゃないし、そもそもおまえ、望んで軍主になった訳じゃないんだろう?」
 愕然として、カルマは口を閉ざした。確かにテッドの言うことは真実だった。リノといい、エレノアといい、キカといい、この船には自分などよりも余程軍主に相応しい人物が揃っている。その中にあって、自分がその座に納まっていられるのは偏に左手の力ゆえ、つまりは成り行き以外のなにものでもない。だが、自分がそれだけの人物でしかないとは流石にカルマも思いたくはなかった。望んでなった軍主ではないにしろ、皆の望む軍主ではありたかった。
 「みんなが僕を信頼してついてきてくれてるんだ。その期待を裏切ることは出来ないよ」
 「裏切りの後に何がくるか、おまえは知っている。それを恐れているんじゃないのか?」
 「……!?」
 瞬間、脳裏を掠めたのは金の髪持つ青年の面差し。
 『僕は君のいいヤツぶったところが大嫌いだよ――!』
 憎悪に満ちた声が鮮やかに蘇る。絶望の刃で貫かれたかと思うほどの胸の痛みも。それを裏切りの結果と呼ぶのなら、裏切ったのは果たしてどちらだったのか。

―――期待に応えられない者は、要らないんだよ―――

 誰よりも優しかったはずの青灰色の瞳がそう言っているような気がして。微かに震える身体を、カルマは思わず両の手で抱き締めた。
「違う…」
 何が違うのかわからないまま、否定の言葉を口にする―――何を否定したいのかもわからなかったが。頭の中がぐるぐるして、うまく物を考えられない。それはどうやら熱の為ばかりではないらしかった。
「…もう一度訊くが、おまえは軍主になりたかったのか?」
「………違う………」
 膝を抱えて額をつけた。俯いた横顔を栗色の髪が覆い隠す。自分の少し長めの髪にこの時は感謝した。こんなときにどんな顔をしたら良いのかがカルマにはわからない。今の自分はきっと、酷い表情になっているに違いない。そんな顔を誰かに見られたくはなかった。
 やはり相手が悪すぎたのだ。深海の底の真珠のように自分の心の奥深くにだけひっそりと秘めていた思いを、琥珀の瞳はいとも容易く見抜いてみせた。
 自身が様々な意味で限界を迎えつつあることを、カルマは知っていた。大切な師の死に始まり、冤罪、流刑、身喰いの紋章―――一生分の不幸が一度に襲ってきたのではないかと思えるほどの、それは悪夢の連続だった。それでも仲間の励ましに支えられ、何とかここまで歩いてきはしたが、気が付いてみれば、いつの間にか不相応な大義まで背負わされていた。抱えたものが大きくなればなるほど、いざ倒れた時の衝撃は計り知れない。期待という名の重圧に押しつぶされそうになりながら、それでもカルマは全てを投げ出すという選択肢を選べなかった。
(歩けない―――戦えない軍主なんて、必要ないじゃないか―――)
「僕には、他に道なんてなかったから――」
「それで?皆の望む優等生の軍主サマを演じてきたってことか?クールークとの戦の勝敗なんざ、本当はどうだっていいクセに」
「!?」
「………」
 横を向いて、テッドは軽く唇を噛んだ。言い過ぎた、と思ったのかもしれない。
(どうでも良かったんだろうか?僕は――?)
 ぼんやりと、テッドの言葉を反芻する。
 これは間違いなく戦争だった。それも群島の命運を分けるほどの。戦うからには勝たねばならないし、それは軍に参加したもの全ての望みでもあった。そこにカルマ一個人の意志は存在しない。ならば自分は、何の為に戦っているのか。
(ああ)
 唐突に理解した。
(テッドが言いたいのは、こういうことか――)
 彼らが大切だと思っていた。それは勿論正直な気持ちだし、これからもきっと変わることはないだろう。だが、それと同等、いやそれ以上に、彼らに望まれる自分でありたいと、自分はそう思っていたのだ。軍主としてでもよい、自分を認めてくれる存在が欲しかったのだ。
(……どうして僕は、スノウに捨てられたの…?)
 ずっと繋ぎ続けてきたと信じていた手を、突如振りほどいた金の髪の幼馴染み。拒絶の痛みと喪失の苦しみ。あれはスノウが悪いのだと周囲の人間は口を揃えたが、カルマにはそうは思えなかった。彼の心の歪みを、わかっていながら見ぬ振りをし続けてきた、自分の弱さが彼を傷つけた――。
 怖かったのだと今ならわかる。もうこれ以上失いたくはなかったのだ、と。失いたくないのならば求められるような存在になるしかない。心の奥底に無意識に抱え込んだ臆病な決意こそが、カルマを支えた。強くした。
(そうだ、僕は本当は―――)
 求めて、求められたくて。けれども得れば失うかもしれなくて。相反する思いはどちらも等分に真実で、だからこそ壁を作った。安定を壊されないギリギリの位置に。そうすれば得るものもない代わりに失うこともない。矛盾しているようだったが、カルマはそれで良かった。
 そうして気付いたら、倒れることも出来なくなっていて。
 孤独を厭ったはずなのに、誰かの傍では安らげなくなっていて。
(必要とされているのは、軍主であって僕じゃない)
 空虚な心に涙はなくて。泣き方すら、もう忘れてしまったのかもしれなかった。
 …その時。ふいにテッドが、カルマの顔の前を横切るようにすっと腕を上げる。
「前におまえ、月になりたいって言ってたよな」
「…うん」
「だったら、おまえはあの月だな」
 船縁の手摺の隙間、テッドが指差したのは、海面に揺らぐ銀青の光だった。さざめく波に捕らわれ、打ち震えて、確たる形すら持たない頼りない月。
「空では、怖いものなんか何もないって言いたげな済ました顔してふんぞり返ってるくせに、誰も見てないところで、ああしてひとりで震えてる。そのくせ、他の星の輝きを妨げるくらいに光るから、誰も傍に近付けない」
「…テッド…」
 引き戻された指が、通り過ぎざまカルマの額を思い切り弾いた。
「…痛っ!!」
「勘違いするんじゃねーぞ」
 辛辣な声音で返される。
「俺は、おまえが軍主だからこの船に乗ったんじゃない。誰もが軍主としてのおまえしか見てないと思ったら大間違いだ」

 痛みに顰められた顔が、次の瞬間驚きに呆然となる。思わず振り向いた視線の先、さらりと爆弾発言をしでかした張本人は、眠そうな顔にふわぁと欠伸をひとつ浮かべた。
 そしてそのまま、カルマの肩へ自分の頭を預けるように凭れ掛かってくる。
「ちょ、ちょっとテッド!重いよ!」
「我侭軍主に付き合って疲れたんだ。肩くらい貸せ」
 こんなふうに誰かに触れられることには慣れていない。肩に掛かる重みと首筋に触れる柔らかな髪に、カルマは緊張して思わず身体を固くする。テッドは居心地悪そうに身動ぎしたが、カルマから離れるつもりはないらしい。頭の位置を定めなおして、ゆっくりと瞳を閉じる。
「おまえの弱さは俺が認めてやる。それでいいだろう…」
「…え?」
「今だけは、ここにいてやるから…」
 潮騒の中に紛れてしまいそうな囁きが耳を掠めた。聞き違えたのだろうかと、カルマは思わずテッドの顔を凝視した。薄っすらと開かれた唇は、尚も何かを訴えかけるかのように微かに震えたが、漏れてきたのは安らかな寝息ばかり。普段の仏頂面からは想像も出来ないようなあどけない表情で、テッドは既に夢の世界の住人となっていた。




―――おまえが俺の弱さを認めてくれたように―――




 だから、胸の内だけで呟かれた言葉は、カルマの耳には届かなかった。




 なんとも言いがたい微妙な面持ちで、カルマはその寝顔を見詰める。緊張したのは一瞬のことで、今はまるで放心したかのように全身の力が抜けていた。
「……言い逃げなんて、卑怯だよ…」
 今までずっと孤独に抱え続けてきた思い。消失と共に無の彼方まで持って行くつもりだったそれを、こんなにもあっけなく木っ端微塵に粉砕してくれて。強い軍主で在ろうと、必死になって周りと自分とを騙し続けてきた僕の努力を一瞬で無駄にしてくれて。それなのに、何でもないような顔で、こうして無防備に僕の肩に、身体を預けてきたりなんかして。
「足掻いてた僕が、馬鹿みたいじゃないか…」
 …実際そのとおりなんだけど、と苦くない笑いが零れた。
 状況は何も変わらない。自分が軍主だということも、この船がクールークと戦争中だということも、親友と敵対している現実も。何も変わらないというのに、今は何故か胸の内に穏やかな風が吹いていた。暗雲を吹き飛ばせるほどに強くはないが、それでも蟠った濃霧は少しずつ散らされていく。
 ―――誰かに虚勢を突き崩されるということが、こんなにも嬉しいものだなんて、知らなかった。
 肩に掛かる温もり。テッドの頭に、カルマも自分の頭を重ねるように凭れ掛かった。急速に訪れる眠りへの誘いに、墜ちていく意識を自覚しながら、カルマは薄く唇を開いた。
「今だけ…もう少しだけ……ここにいてもいい…?」
 誰に聞かせるでもない呟きは、夜色の潮風に攫われて消えた。






 いつまでも現れない軍主に業を煮やして、自ら捜索に来た軍師の雷が後部甲板に盛大に炸裂し、軍主と、付き合いよろしく熱を出したテッドの二人が、揃って医務室に軟禁されることとなったのは、この数刻のちの話である。


 
















書いてて、つくづくウチの4様は後ろ向きだと感じた一本。
ゲームをやった時は幻水4No.1の漢前だと思っていたのに!!
ほ、ほら、病気の時って気持ちも弱くなるもんだし!!(言い訳)
スノウ大好き、雪至上主義のウチの4様でも一応、
彼との決別にはいっちょ前に傷付いてたんですよー…と言ってみたかったんです…。
そして相変わらずの世話焼きテッド。「俺に構うな」と言っておきながら
誰よりも人のことを気にかけてしまうような、そんなテッドに萌えるんです…!!(聞いてない)





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