―――裁き―――




「なんで……だよおっ…!!」
 震える喉から絞り出せたのは、泣き声の一歩手前の情けない声だった。だが、リオにはそれでも構わなかった。どんなに情けなくても、みっともなくても構わない。伝えたい思いがあり、伝えたい言葉があり、伝えたい相手は目の前にいる。彼に伝えることが出来るのなら―――彼を失わずに済むのなら、体裁などどうでも良かった。涙に上擦った声だろうと構わない。幾らでも張り上げてやる。
「わかってくれリオ……このままでは、ふたりとも力尽きてしまう……。そうなる前に、どうしても、ここで紋章をひとつにしなければならないんだ…。新生デュナンには、まだ君の力が必要だ…君をここで死なせる訳にはいかないんだ…だから」
「そんな…そんな勝手なこと言うなよぉっっ!!」
 ゆるゆると差し出されたジョウイの右手首を、リオは紋章を宿していないほうの手で、きつく掴んだ。
「僕が何の為に、ここまで来たと思ってるんだよ!?ずっとずっと、僕はジョウイを取り戻す為に戦ってきたのに!!やっと戦争が終わったっていうのに、何でまた僕から離れようとするんだよ!?ジョウイを死なせて僕だけ生き残るなんて、そんなの、僕は絶対に嫌だからね!!」
「リオ……僕にはもう、生きる資格なんて…ないんだよ」
 弱々しい笑みを浮かべて呟かれたジョウイの言葉が、リオの胸に深く突き刺さった。
「ハイランドを滅ぼしたのは…僕だ。僕が皇国を滅亡に追い込んだ。アガレスを殺し、ルカを陥れ、何万という兵士たちを死地へと追いやった…この地に消えぬ嘆きを刻み込んだ…。僕の手は、けして拭えぬ血に塗れている…この身は、数多の死者とその数倍の生者たちの怨嗟を背負っている…。僕の罪は、許されるものではない……この戦争の犠牲となった全ての人たちに報いる為に―――僕は、罰を受けなければならないんだ―――」
 わかってくれ、と。繰り返された吐息交じりの呟きを受けて、リオの瞳は地に伏せられた。
 ジョウイの手首を掴んだ手が、小さく震えている。
 ぎり、と噛み締められる唇。舞い降りた沈黙は、次第に激昂を孕んで膨れ上がった。
「誰が……!!」
 突然、ぐいと胸倉を掴みあげられ、ジョウイは反射的に顔を上げた。触れ合わんばかりの距離で視線を突き合わせ、リオは感情を爆発させた。
「誰が君に、死ねなんて言ったよ!!!?」
 ジョウイの喉から、小さな呻きが漏れた。瞳を大きく見開いて、ジョウイはリオを見詰めた。呼吸をするのも忘れてしまったかのような呆然とした表情で―――皇国最後の皇王としてのそれではなく、ただのひとりの少年の顔で。
「許されないなんて、生きる資格がないなんて…そんなこと誰も言ってないだろ!?僕に全部押し付けて、自分だけ楽になろうなんて、無責任なこと考えるなよ!!生きるのに許しが必要だって言うなら、僕が君を許す。罰を受けなければならないって言うなら、僕が罰を与えてやる。君は…忘れちゃいけないんだ。哀しみの声が、戦争の傷跡がこの国から消えるまで―――君は犠牲になった人たちのことを忘れちゃいけないんだ。忘れずに抱えて、彼らの代わりに未来を見届けろ。それが、僕が君に与える、君が背負うべき罰だ!!」
















2主とジョウイ、in約束の地。ふたりとも初書き。
―――生きるほうが戦いだ!(←番組違います)





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